結論:保険料控除の書き方は「誰が払ったか→どの欄か→いくらまで」の順で決まる
- 誰が実際に払ったかを確認する: 社会保険料控除は「自己と生計を一にする配偶者やその他の親族の負担すべき社会保険料を支払った場合」に、支払った人が控除を受けられるとされています(国税庁 タックスアンサーNo.1130、2025年)。生命保険料控除も契約者名義ではなく保険料負担者が申告します。
- 証明書の正式名称で控除欄を決める: 「生命保険料控除証明書」「地震保険料控除証明書」「社会保険料(国民年金保険料)控除証明書」「小規模企業共済等掛金払込証明書」の4種類で、書く欄が確定します。
- 上限に達したら書かない: 一般生命保険料(新制度)は年8万円超で控除額が一律4万円に張り付きます。それ以上の証明書を転記しても還付は増えません。
令和8年分の変更点:23歳未満の扶養親族欄が新設された

「扶養控除の対象=特例の対象」ではない
- 0〜15歳の子も該当します: 扶養控除の対象外(扶養控除等申告書では「住民税に関する事項」にしか書かない)ですが、扶養親族ではあるため特例の対象になり得ます。
- 合計所得58万円超のアルバイト大学生(21歳)は該当しません: 扶養親族の合計所得金額要件は令和7年分以後58万円以下(給与収入のみなら年収123万円以下)に引き上げられています(国税庁、2025年)。これを超えると扶養親族ではなくなるため、22歳以下でも特例は使えません。
「うちは高校生の子がいるから扶養控除の対象=特例も使える」「大学生がいるから使える」という判断は誤りにつながります。判定軸は年齢23歳未満と合計所得58万円以下の2つです。
増えるのは所得税分だけ:住民税の上限は据え置き
【独自】その控除証明書、誰の申告書に・どこに書く?判定フローチャート
- はい → 書きません。健康保険・厚生年金・雇用保険は勤務先が金額を把握済みです。iDeCoも事業主払込(給与天引き)なら記入不要です。
- いいえ → Q2へ
| 証明書の名称 | 書く欄 |
|---|---|
| 生命保険料控除証明書 | 生命保険料控除欄 → Q3へ |
| 地震保険料控除証明書 | 地震保険料控除欄 → Q3へ |
| 社会保険料(国民年金保険料)控除証明書 | 社会保険料控除欄(原本の添付・提示が必須) → Q3へ |
| 小規模企業共済等掛金払込証明書 | 小規模企業共済等掛金控除欄「個人型年金加入者掛金」 → Q3へ |
- 自分 → 自分の申告書に書きます。
- 配偶者・親など別の人 → その負担者の申告書に書きます。自分の申告書には書けません。
- はい → 新様式の特例欄に記入します。一般生命保険料(新制度)の上限が6万円になります。
- いいえ → 上限4万円で計算します。
よくある誤り3つ
- 扶養控除の対象=特例の対象ではありません。判定は年齢23歳未満・合計所得58万円以下です。
- 親名義の保険でも、自分が保険料を払っていれば自分の控除になり得ます(受取人の要件は別途あります)。
- 国民年金の2年前納を各年に按分する場合は、自分で内訳明細書を作成して添付する必要があります(後述)。
【独自】世帯で最適化する:誰の申告書に寄せると還付が増えるか
寄せられる代表例
- 大学生の子の国民年金: 20歳になった学生の保険料を親が払っていれば、親の社会保険料控除になります。
- 無職・収入の少ない配偶者の国民年金・国民健康保険: 支払った側の控除になります。
- 別居の親の国民健康保険・介護保険: 生計を一にしていて、実際に自分が支払っていれば対象になり得ます。
共働き世帯での考え方
生命保険料控除についても、申告するのは契約者名義の人ではなく保険料を実際に負担した人です。ただし保険金受取人が本人・配偶者・その他の親族であることなどの要件があるため、個別の判断は勤務先または税務署にご確認ください。
【独自】どこまで書けば還付が増えるか:一般生命保険料の有利判定と手取り増加額
| 年間払込保険料(新制度) | 控除額 |
|---|---|
| 2万円以下 | 支払額の全額 |
| 2万円超〜4万円以下 | 支払額×1/2+1万円 |
| 4万円超〜8万円以下 | 支払額×1/4+2万円 |
| 8万円超 | 一律4万円(特例適用時は計算式が伸び、年20万円超で6万円) |
| 年間払込保険料(旧制度) | 控除額 |
|---|---|
| 2万5千円以下 | 支払額の全額 |
| 2万5千円超〜5万円以下 | 支払額×1/2+1万2,500円 |
| 5万円超〜10万円以下 | 支払額×1/4+2万5千円 |
| 10万円超 | 一律5万円 |
一般生命保険料控除の有利判定シミュレーション(令和8年分)
| 新の年間保険料 | 旧の年間保険料 | (A)旧のみ | (B)新旧合算・特例なし | (C)新旧合算・特例あり | 採用額 | 所得税減税(5%/10%/20%) | 住民税減税 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| ①6万円 | 0円 | ― | 3.5万円 | 3.5万円 | 3.5万円 | 1,750/3,500/7,000円 | 約2,800円 |
| ②10万円 | 0円 | ― | 4万円(上限) | 4.5万円 | 4.5万円 | 2,250/4,500/9,000円 | 約2,800円 |
| ③20万円 | 0円 | ― | 4万円(上限) | 6万円(上限) | 6万円 | 3,000/6,000/12,000円 | 約2,800円 |
| ④4万円 | 8万円 | 4.5万円 | 4万円(上限) | 6万円 | 6万円 | 3,000/6,000/12,000円 | 約2,800円 |
| ⑤0円 | 12万円 | 5万円 | 5万円 | 5万円 | 5万円 | 2,500/5,000/10,000円 | 約2,800円 |
| ⑥24万円 | 6万円 | 3.5万円 | 4万円(上限) | 6万円(上限) | 6万円 | 3,000/6,000/12,000円 | 約2,800円 |
※所得税の控除額は国税庁No.1140の計算式から算出。住民税は上限2.8万円で頭打ちのため、いずれのケースも約2,800円(税率10%)で頭打ちです。復興特別所得税は含めていません。
- ケース③⑥のように新契約だけで年20万円超払っている人が、特例のフルインパクト(控除2万円増)を受けられる唯一のパターンです。
- ケース⑤のように旧契約しかなく年10万円超払っている人は、旧のみの上限5万円が効きます。特例があっても新契約がなければ関係ありません。
- 特例で増えるのは所得税の控除2万円分だけです。税率10%なら手取り増は年2,000円で、住民税は1円も変わりません。
【独自】4つの控除欄 早見表:証明書の入手元・添付の要否・見落としやすいもの
| 控除欄 | 対象となる支払い | 証明書の発行元 | 届く時期 | 添付・提示 | 所得税の上限 | 住民税の上限 | 見落としやすいもの |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 生命保険料控除 | 生命保険・医療保険・個人年金保険の保険料 | 生命保険会社・共済 | 10月頃 | 必要(旧生命保険料で1契約9,000円以下は不要) | 12万円(令和8・9年分は一般・新が6万円) | 7万円 | 県民共済・こくみん共済・かんぽ。医療保険は「介護医療」区分 |
| 地震保険料控除 | 地震保険料・旧長期損害保険料 | 損害保険会社 | 10〜11月頃または保険証券に同封 | 必要 | 5万円 | 2.5万円 | 火災保険部分は対象外。平成18年以前契約の長期損害保険 |
| 社会保険料控除 | 自分で払った国民年金・国民健康保険・介護保険など | 日本年金機構・市区町村・健康保険組合 | 国民年金は11月上旬(10月以降の初納付者は翌年2月) | 国民年金・国民年金基金は必須。国民健康保険・介護保険は不要 | 全額 | 全額 | 退職〜転職の空白期間に払った国保・年金、子や親の国民年金、追納・過年度分、口座振替の家族分 |
| 小規模企業共済等掛金控除 | iDeCo・小規模企業共済の掛金 | 国民年金基金連合会・中小機構 | 10月頃 | 必要(事業主払込=給与天引きなら記入不要) | 全額 | 全額 | iDeCo。企業型DCのマッチング拠出分は対象外 |
生命保険料控除は上限12万円、地震保険料控除は上限5万円ですが、社会保険料控除とiDeCoには上限がなく全額が控除対象です。資産形成層にとって金額インパクトが最も大きいのはこの2つで、令和5年分の年末調整では社会保険料控除の1人当たり平均控除額が72万円(生命保険料控除は7万円、地震保険料控除は2万円)でした(国税庁 令和5年分 民間給与実態統計調査、2024年)。
年末調整の生命保険料控除の書き方:記入欄への転記手順
- 保険会社等の名称(略称可)
- 保険等の種類(終身・医療など証明書の表記どおり)
- 保険期間
- 契約者の氏名
- 保険金等の受取人の氏名と続柄
- 新・旧の区分(該当する方に○)
- 申告額(12月末までの払込見込額)
個人年金保険料控除は「税制適格特約」の有無で決まる
- 年金の受取人は、保険料を払い込む人またはその配偶者であること
- 保険料は年金支払開始までに10年以上の期間にわたって定期に払い込むこと
- 年金の支払は原則として受取人が満60歳になってから開始する、10年以上の定期または終身の年金であること
年末調整の社会保険料控除の書き方:書くもの・書かないもの
書かなくていいもの
書くもの:記入する4項目
- 社会保険の種類(国民年金、国民健康保険 など)
- 保険料支払先の名称(日本年金機構、○○市 など)
- 保険料を負担することになっている人の氏名・続柄
- 本年中に支払った保険料の金額
- 国民年金・国民年金基金: 国税庁No.1130(2025年)によると、金額を証する書類を保険料控除申告書に添付または提示する必要があります。
- 国民健康保険・介護保険: 証明書の添付は不要で、支払額の記入だけで申告できます(金額は市区町村の通知や領収書で確認)。
【独自】国民年金の前納・過年度分・追納の書き方
- 2年前納した場合: 国税庁(2025年)によると、「納めた年に全額控除する方法」と「各年分の保険料に相当する額を各年において控除する方法」を選択できます。各年に按分する方法を選ぶ場合は、自分で『社会保険料(国民年金保険料)控除額内訳明細書』を作成し、日本年金機構発行の控除証明書と併せて保険料控除申告書に添付して提出する必要があります。
- 追納・過年度分を払った場合: 学生納付特例の追納や、過去の未納分を後から納めた保険料も、支払った年の控除になります。何年分の保険料かは問いません。
iDeCoは「小規模企業共済等掛金控除」欄へ:資産形成層が最も取り逃す欄
- 個人払込(自分の口座から引落): 国民年金基金連合会から10月頃に届く「小規模企業共済等掛金払込証明書」を添付し、申告書の「個人型年金加入者掛金」欄に自分で記入します。
- 事業主払込(給与天引き): 勤務先が把握しているため記入不要です。
企業型DCのマッチング拠出分は小規模企業共済等掛金控除の対象外です(給与天引きで処理されます)。証明書が届かないものは基本的に記入不要と考えて差し支えありません。
地震保険料控除の書き方と旧長期損害保険の経過措置
| 区分 | 年間保険料 | 控除額 |
|---|---|---|
| 地震保険料 | 5万円以下 | 全額 |
| 地震保険料 | 5万円超 | 一律5万円 |
| 旧長期損害保険料 | 1万円以下 | 全額 |
| 旧長期損害保険料 | 1万円超〜2万円以下 | 支払額×1/2+5,000円 |
| 旧長期損害保険料 | 2万円超 | 一律1万5千円 |
提出前チェックリスト10項目
- 金額は「証明額」ではなく12月末までの見込額(申告額)を書いたか
- 保険料を実際に負担している人の申告書に書いているか(契約者名義ではない)
- 家族の国民年金・国民健康保険を払った分を書き漏らしていないか
- 共働きの場合、社会保険料控除を有利な側に寄せる検討をしたか
- 給与天引きの社会保険料を重複記入していないか
- 同一区分で新旧両方あるとき、(A)旧のみと(B)新旧合算の両方を計算したか
- 控除額が上限に達した以降の証明書は、無理に書こうとしていないか
- (令和8年分)23歳未満・合計所得58万円以下の扶養親族欄を確認したか
- 国民年金・国民年金基金の控除証明書を添付・提示したか(国民健康保険は不要)
- iDeCoを小規模企業共済等掛金控除の欄に書いたか(事業主払込なら記入不要)
来年以降は「手書きしない」のが最大の予防策
ケース別の対処:紛失した・提出後に気づいた・間に合わなかった
- 証明書を紛失した: 保険会社に再発行を依頼します。多くの会社がWebや電話で受け付けており、マイナポータル経由の電子データ取得に対応している場合もあります。
- 提出後に誤りに気づいた: 勤務先での年末調整の処理が終わる前(源泉徴収票の発行前)なら、再調整に応じてもらえる場合があります。まず担当部署に相談してください。
- 年末調整に間に合わなかった: 5年以内なら還付申告(確定申告)で控除を受けられます。出し忘れた年の分も遡って手続きできます。
一次情報はどこで確認できるか
- 令和8年分の様式と記載例: 国税庁「各種申告書・記載例」令和8年分 給与所得者の保険料控除申告書(2026年)
- 生命保険料控除の計算根拠: 国税庁 タックスアンサーNo.1140(2025年)
- 個人年金保険料控除の要件: 国税庁 タックスアンサーNo.1141(2025年)
- 社会保険料控除の範囲: 国税庁 タックスアンサーNo.1130(2025年)
- 地震保険料控除の計算根拠: 国税庁 タックスアンサーNo.1145(2025年)
- 令和8年分の特例の根拠: 財務省 令和7年度税制改正の大綱(令和6年12月27日閣議決定)、令和8年度税制改正の大綱(令和7年12月26日閣議決定)
- 2年前納の取扱い: 国税庁「2年前納された国民年金保険料の社会保険料控除」(2025年)
平成24年1月1日以後に締結した保険契約等(新契約)と平成23年12月31日以前に締結した保険契約等(旧契約)では、生命保険料控除の取扱いが異なります。
保険会社各社も控除額の計算ツールを提供していますが、令和8年分の特例6万円への対応状況は提供元により差がある可能性があります。最終確認は申告書下部の計算式で行うのが確実です。
やってはいけないNG対応
- 証明額をそのまま転記する: 証明書発行時点までの金額のため、12月末までの見込額より少なくなり、控除が過少になります。
- 契約者名義だけで申告先を決める: 生命保険料控除・社会保険料控除ともに、判断軸は保険料を実際に負担した人です。
- iDeCoを生命保険料控除欄に書く: 欄違いで正しく控除されません。小規模企業共済等掛金控除の欄が正解です。
- 給与天引き分を社会保険料控除欄に書く: 二重計上となり、差し戻しや修正の原因になります。
- 特例6万円を理由に保険を増やす: 増えるのは所得税の控除2万円分のみで、住民税は据え置きです。税率10%なら手取り増は年2,000円程度にとどまります。保険の要否は保障内容で判断すべき事項です。
- 面倒だから提出しない: 保険料控除は自己申告が前提の制度です。書かなければ勤務先も税務署も控除を適用しません。
まとめ:今日やることは3つ
よくある質問
年末調整の社会保険料控除の書き方で、何を書けばいいですか?
生命保険料控除の年末調整の書き方で、証明書のどの金額を書きますか?
子どもの国民年金を親が払っています。誰の申告書に書きますか?
家族名義の生命保険でも控除の対象になりますか?
令和8年分の23歳未満の扶養親族の特例は、高校生の子でも使えますか?
保険料控除申告書を出し忘れたらどうなりますか?
国民年金を2年前納しました。どう書きますか?
※本記事は2026年9月2日時点で公表されている情報(国税庁・財務省等の公表資料)に基づいています。税制改正の内容や施行時期は変更される可能性があります。個別の税務判断は、税務署または税理士にご相談ください。




