遺族年金は、亡くなった方に生計を維持されていた家族が受け取れる公的年金です。受給額は「亡くなった人が加入していた年金の種類」と「残された家族の構成」でほぼ決まります。結論として、会社員だった夫が亡くなり妻と子ども2人が残された世帯では、2025年度(令和7年度)の金額でおおむね年約168万円・月約14万円が一つの目安とされています。まずは下の早見表で自分の世帯タイプを確認し、該当する章で計算方法をたどってください。
本記事の金額は2025年度(令和7年度)の基準に基づく一般的な目安です。年金額は毎年度改定され、個々の加入状況で変わります。正確な金額は日本年金機構や最寄りの年金事務所でご確認ください。
遺族年金はいくらもらえる?まず結論から
遺族年金には遺族基礎年金と遺族厚生年金の2種類があり、会社員世帯なら両方で月約14万円、自営業世帯なら遺族基礎年金のみで月約11万円が目安とされています。まず「亡くなった人の職業」と「子の有無」を確認するのが第一歩です。
以下は世帯タイプ別のざっくりした早見表です。細かな前提は後の章で解説します。
| 世帯タイプ | 受け取れる主な年金 | 年額の目安 | 月額の目安 |
|---|---|---|---|
| 会社員の夫+妻+子2人 | 遺族基礎年金+遺族厚生年金 | 約168万円 | 約14万円 |
| 会社員の夫+妻(子なし・40〜64歳) | 遺族厚生年金+中高齢寡婦加算 | 約100万円前後 | 約8万円前後 |
| 自営業の夫+妻+子2人 | 遺族基礎年金のみ | 約131万円 | 約11万円 |
| 自営業の夫+妻(子なし) | 原則なし(寡婦年金・死亡一時金の対象) | ケースによる | — |
| 共働きで妻が死亡+夫+子 | 遺族基礎年金+遺族厚生年金 | 世帯の加入状況による | — |
遺族年金額を決める最大の分かれ目は、亡くなった人が厚生年金に加入していたか(会社員・公務員か)です。厚生年金加入者は遺族厚生年金が上乗せされるため、自営業(国民年金のみ)より手厚くなる傾向があります。
会社員・公務員が亡くなった場合は、遺族基礎年金(子がいる場合)と遺族厚生年金の両方が対象になり得ます。自営業やフリーランスなど国民年金だけに加入していた場合は、原則として遺族基礎年金のみで、しかも子がいないと受け取れない点に注意が必要です。
遺族年金の金額を左右する4つの要因を深掘り

遺族年金の金額は、①加入していた年金制度、②子の有無と人数、③亡くなった人の収入と加入期間、④受け取る人の年齢――の4つでほぼ決まります。同じ「会社員の夫」でも、収入や家族構成によって数万円単位の差が出ます。
加入していた年金制度で土台が変わる
最も影響が大きいのは、亡くなった人が国民年金だけか、厚生年金にも入っていたかです。厚生年金加入者は遺族厚生年金が加わるため、受給額の土台が大きくなります。会社員・公務員は厚生年金、自営業・無職は国民年金という区分がおおよその目安です。
子の有無と人数で遺族基礎年金が変わる
遺族基礎年金は「子のある配偶者」または「子」に支給される仕組みで、子がいなければ遺族基礎年金は支給されません。ここでいう子とは、原則18歳になった年度の3月31日までの子(障害がある場合は20歳未満)を指します。子の人数が増えると加算額も増えます。
亡くなった人の収入と加入期間
遺族厚生年金は、亡くなった人の老齢厚生年金(報酬比例部分)の4分の3で計算されるため、現役時代の収入が高いほど、加入期間が長いほど多くなります。ただし加入期間が短くても、一定の要件を満たせば300月(25年)加入とみなして計算する最低保証があるとされています。
受け取る人の年齢
子が18歳到達年度末を過ぎると遺族基礎年金は終了します。その後、40歳以上65歳未満の妻には中高齢寡婦加算が上乗せされるなど、受給者の年齢によって金額が段階的に変わります。
4要因のうち自分でコントロールできる部分は限られますが、厚生年金に何年入っていたかは将来の遺族厚生年金額に直結します。共働きで厚生年金に加入しておくことは、万一への備えにもつながります。
自分はどのタイプの遺族年金をもらえる?見分け方
自分が受け取れるのは、亡くなった人が会社員なら遺族基礎年金+遺族厚生年金、自営業なら遺族基礎年金のみが基本です。ただし子の有無や生計維持の要件を満たすかで結論が変わります。
遺族基礎年金を受け取れる人
遺族基礎年金の対象は、亡くなった人に生計を維持されていた「子のある配偶者」または「子」です。日本年金機構の案内によると、子は18歳到達年度の末日までの間(障害等級1・2級なら20歳未満)にある人を指します。子のいない配偶者は対象外とされています。
遺族厚生年金を受け取れる人
遺族厚生年金は、厚生年金の加入者などが亡くなったとき、生計を維持されていた遺族が受け取れます。優先順位は①配偶者・子、②父母、③孫、④祖父母の順です。夫が受け取る場合は死亡時に55歳以上であることなどの条件があり、支給開始は原則60歳からとされています。
「生計維持」の年収要件
いずれの遺族年金も、受け取る人の前年収入が年850万円未満(または所得655万5千円未満)であることが要件とされています。共働きで配偶者に十分な収入がある場合は対象外になることもあるため、事前の確認が欠かせません。
遺族基礎年金と遺族厚生年金は、要件を満たせば両方を同時に受け取れます。会社員世帯で子がいる間は、この「二階建て」で受給できるケースが多くなります。
遺族年金の具体的な計算方法(2025年度版)
2025年度(令和7年度)の遺族基礎年金は基本額831,700円に子の加算を足し、遺族厚生年金は報酬比例部分の4分の3で計算します。順に見ていきましょう。
遺族基礎年金の計算
遺族基礎年金は「基本額+子の加算」の定額方式です。令和7年度は基本額831,700円、子の加算は第1子・第2子が各239,300円、第3子以降が各79,800円とされています。
| 子の人数 | 遺族基礎年金の年額(令和7年度・目安) |
|---|---|
| 子1人 | 約107万円(831,700+239,300) |
| 子2人 | 約131万円(さらに+239,300) |
| 子3人 | 約139万円(さらに+79,800) |
遺族厚生年金の計算(報酬比例部分の4分の3)
遺族厚生年金は、亡くなった人の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3です。例として、平均標準報酬額(賞与込みの月額換算)が30万円、加入期間が最低保証の300月の場合を試算します。
- 報酬比例部分=30万円×5.481÷1000×300月=約49万円
- 遺族厚生年金=約49万円×3/4=約37万円(年額)
つまり月約3万円が遺族厚生年金の目安です。収入が高い人や加入期間が長い人は、これより多くなります。
中高齢寡婦加算
子がいない、または子が成長して遺族基礎年金が終了した妻のうち、40歳以上65歳未満の人には中高齢寡婦加算が上乗せされます。令和7年度は年623,800円(月約5.2万円)とされています。これにより、子育て後の妻の受給額が急に下がりすぎないよう調整されています。
ここでの計算はあくまで概算です。実際は加入期間の内訳や生年月日による経過措置、物価・賃金による毎年度の改定で変わります。具体的な見込み額は「ねんきんネット」や年金事務所で試算してもらうのが確実です。
ケース別・遺族年金はいくらもらえる?
同じ遺族年金でも、世帯タイプで金額は大きく変わります。ここでは代表的な4パターンの目安を示します。いずれも令和7年度の概算です。
会社員の夫が亡くなった場合(妻+子2人)
遺族基礎年金約131万円+遺族厚生年金約37万円で、合計は年約168万円・月約14万円が目安です。子2人分の加算が入るため、子育て期の受給額は比較的手厚くなります。ただし子が18歳到達年度末を過ぎると遺族基礎年金がなくなり、金額は大きく下がります。
子どもが独立した後・子どものいない妻
子が独立すると遺族基礎年金は終了し、遺族厚生年金約37万円+中高齢寡婦加算約62万円で、年約100万円前後・月約8万円程度になります。子育て期からの「減額」をあらかじめ見込んでおくことが大切です。
自営業(国民年金のみ)の場合
自営業の夫が亡くなった場合、遺族厚生年金はなく遺族基礎年金のみです。妻+子2人なら年約131万円・月約11万円が目安です。子がいない自営業世帯の妻は、遺族基礎年金を受け取れない点が最大の落とし穴です。その場合でも、婚姻10年以上などの要件を満たせば寡婦年金、または死亡一時金(12万〜32万円)が受けられることがあります。
共働きで妻が亡くなった場合
妻が会社員で亡くなった場合も、要件を満たせば夫や子が遺族厚生年金を受け取れます。ただし夫は死亡時55歳以上で支給は原則60歳からなど、男女で扱いが異なる部分があります(後述の2025年改正で見直しが進みます)。
会社員世帯は「子がいる間は月約14万円、子の独立後は月約8万円」と段階的に下がるのが典型例です。自営業世帯はさらに手薄で、子がいないとゼロになる可能性もあります。この差を前提に備えを考えることが重要です。
遺族年金だけで足りないときの備え方
遺族年金は生活費の全額を賄うものではないため、不足分は貯蓄や民間保険、資産形成で補う考え方が一般的です。まずは「遺族年金+自分の収入」でいくら足りないかを把握しましょう。
不足額を「見える化」する
総務省の家計調査などを参考に、遺された家族の生活費・教育費を見積もり、そこから遺族年金と就労収入を差し引いて不足額を出します。必要保障額=支出見込み−(遺族年金+収入+貯蓄)という引き算で考えると整理しやすくなります。
民間保険で上乗せする
不足が大きい場合は、収入保障保険や定期保険で上乗せする方法があります。掛け捨て型は保険料を抑えやすい一方、解約してもお金は戻りません。保障は手厚いほど保険料も上がるため、必要保障額に合わせて過不足なく設計するのが基本です。
NISA・iDeCoで資産形成する
長期の備えとしては、NISAやiDeCoといった税制優遇のある制度で資産形成を進める選択肢もあります。ただし投資には値下がりのリスクがあり、元本を下回る可能性もあります。生活防衛資金を確保したうえで、無理のない範囲で少額から始めるのが無難とされています。
保険や投資には手数料や運用コストがかかります。「保障」と「貯蓄・投資」を混同せず、目的ごとに商品を分けて考えることが失敗を防ぐコツです。金融商品を選ぶ際は、リスクと手数料を必ず確認しましょう。
専門家・公的情報の見解と2025年改正の注意点
遺族年金は制度が複雑なため、公的な一次情報と2025年の法改正の動きを押さえておくことが重要です。金額や要件は今後変わる可能性があります。
日本年金機構は、遺族年金の要件や金額を公式サイトで公開しており、個別の見込み額は「ねんきんネット」や年金事務所で確認できます。厚生労働省も年金額の改定を毎年度公表しています。まずはこうした一次情報にあたるのが確実です。
遺族基礎年金は、国民年金の被保険者などが亡くなったとき、その人によって生計を維持されていた「子のある配偶者」または「子」が受け取れます。(日本年金機構「遺族年金」の案内より要約)
2025年(令和7年)に成立した年金制度改正法では、子のない配偶者が受け取る遺族厚生年金について、男女差をなくし原則5年間の有期給付とする見直しが決まったとされています。施行は2028年度からで、長い経過措置が設けられる予定です。すでに受給している人などは対象外とされており、詳細は今後の政令などで定まります。
将来設計を立てる際は、現在の制度が将来も同じとは限らない点に留意が必要です。特に子のない若い世帯は、改正後は有期給付になる可能性を踏まえ、最新情報を必ず確認してください。
遺族年金の申請でやってはいけないNG対応
遺族年金は自動では支給されず、請求しないと受け取れません。放置や届出漏れは受給額を減らす原因になるため、次のNG対応は避けましょう。
- 請求せず放置する:遺族年金は請求主義で、時効は原則5年です。5年を過ぎた分は受け取れなくなる可能性があります。
- 生計維持の書類を用意しない:住民票や収入を証明する書類が必要です。準備不足で手続きが滞ることがあります。
- 再婚・事実婚の届出を怠る:受給者が再婚すると原則として受給権を失います。届け出ないと後日返還を求められることがあります。
- 「どうせもらえない」と自己判断する:自営業でも寡婦年金や死亡一時金の対象になることがあり、確認せず諦めるのは禁物です。
遺族年金は「請求して初めて受け取れる」制度です。亡くなった直後は手続きが多く大変ですが、5年の時効を意識し、早めに年金事務所へ相談することが受給額を守る最大のポイントです。金額や要件に迷ったら、社会保険労務士やファイナンシャルプランナーなど専門家への相談も検討してください。
よくある質問
Q. 遺族年金はいつまでもらえますか? A. 受け取る人によって異なります。遺族基礎年金は子が18歳到達年度末(障害があれば20歳未満)まで、遺族厚生年金は妻の場合、原則として再婚などがない限り生涯受け取れるとされています。ただし夫が30歳未満で子のない妻は、5年間の有期給付とされています。
Q. 遺族年金と自分の老齢年金は両方もらえますか? A. 65歳以降は調整されます。原則として自分の老齢厚生年金を優先的に受け取り、遺族厚生年金がそれを上回る部分だけ支給される仕組みとされています。単純な合算ではない点に注意が必要です。
Q. 遺族年金に税金はかかりますか? A. かかりません。遺族基礎年金・遺族厚生年金は所得税・住民税が非課税とされています。確定申告で所得に含める必要もないのが一般的です。
Q. パート・専業主婦でも遺族年金は受け取れますか? A. 受け取れる可能性があります。受給者側の前年収入が年850万円未満などの生計維持要件を満たせば、パートや専業主婦でも対象になります。まず年金事務所で要件を確認しましょう。
Q. 遺族年金だけで生活できますか? A. 世帯によりますが、遺族年金だけで生活費を全額賄うのは難しいケースが多いとされています。就労収入や貯蓄、民間保険と組み合わせて不足を補う設計が現実的です。
最終確認日:2026年7月15日。本記事は2025年度(令和7年度)時点の一般的な情報に基づく解説であり、個別の受給可否・金額を保証するものではありません。実際の手続きや金額は、日本年金機構・年金事務所、または社会保険労務士やファイナンシャルプランナーなどの専門家にご確認ください。
